[高速度工具鋼とは]
金属加工で使用する切削工具の材質には超合金をはじめ数種類ありますが、そのひとつに【高速度工具鋼】があります。
高速度工具鋼とは、工具鋼における高温下での耐軟化性の低さを補い、より高速での金属材料の切削を可能にする工具の材料とすべく開発された鋼です。
超硬合金のように材質によって使い分ける必要はなく、どのような材質にでも使用することができますが、使用するときは切削点の温度が600℃以下である事が条件となります。
高速度鋼は【ハイス】とも呼ばれ【ハイスピード・スチール】を縮めた呼称で、また、HSS【国際標準化機構(ISO)の表記方法】やSKH【日本工業規格(JIS)の表記方法】と表記されます。
高速度工具鋼は【タングステン系】と【モリブデン系】の2種類に大別されます。
含有成分によって分けられ、モリブデン系はタングステン系に比べ『硬さ』や『粘り強さ』が優れています。また、共に【コバルト(Co)】を添加する事により硬さ(耐摩耗性)が高くなる特徴があります。
[高速度工具鋼の特徴]
高速度工具鋼は約600℃以上になると硬さが急激に低下するため、使用に関し切削点【切削工具の刃先と金属が接触する点】が約600℃以下の条件下の元使用することが前提となります。
木材加工では切削点が600℃に達する事はありませんが、金属加工では1000℃に達する事があり、直接測る事はできませんが切り屑の色から間接的に知る事ができます。
⇒鉄鋼材料では、切削点の温度が低い順から切り屑の色が【300℃】薄黄色→褐色→紫色→菫色→濃青色→淡青色【600℃】に変色していくので、高速度工具鋼を使用する場合、切り屑の色が紫程度の条件が限界といえます。
切り屑の色は【テンパカラー】といい、酸化被膜のあつさにより変色して見える干渉色で、CDやDVDの裏側やシャボン玉、孔雀の羽等も光の干渉により変色するテンパカラーの一種です。